またしても虚偽自白?

 不正に入手したカードで現金を引き出したとして窃盗罪に問われた金沢市の男性被告(61)が、防犯カメラに映った人物とは別人とする鑑定が出た問題で11日、金沢地裁(入子光臣裁判官)で第6回公判が開かれた。


 被告が一貫して容疑を否認しながらも、何回も取り調べられて「防犯カメラの映像は自分」と矛盾する供述をした理由が焦点となり、被告は「似ていたから、誤解されても致し方ないという気持ちがあった」と答えた。次回公判は7月20日で、検察側が無罪論告をする見通し。
(中略)
 関西学院大法科大学院の川崎英明教授の話「過去の誤判事件を生んだ捜査の構造と似ている。映像の鑑定など調書の矛盾点を突き詰める客観的捜査をしていれば、おのずと正しい結論が出ていたはずだ」

 窃盗罪に問われた金沢市の男性被告(61)の公判で、金沢地裁(入子光臣裁判官)が防犯カメラに映った人物は別人とする鑑定結果を証拠採用した問題で、捜査を担当した石川県警松任署幹部(当時)は4日、読売新聞の取材に対し、「冤罪(えんざい)事件」と認め、「慎重に捜査を重ねたが、自分のミス。(被告に)申し訳ない」と語った。


 この幹部によると、防犯カメラの映像は鮮明で、誰が見ても本人と思ったという。男性は同署の調べに容疑は否認したが、画像については「『写真は自分』と話した」という。その上で、「画像は自分じゃないと否認していたら逮捕していなかった」と弁解した。


 一方、男性も同日、取材に応じ、「(県警の調べに)写真は似ているけど自分とは違うと話した」と、幹部の話を否定。「(事件のあった)コンビニに行ったこともないと言った」と語り、県警と検事に「頭下げて『すまなかった』と言ってほしい」と謝罪を求めた。
(後略)

まずは監視カメラの映像を「自分だ」と認めさせて、それを梃に犯行を認めさせよう……という取調べ方針だったのでしょう。今回の場合、(無罪となる見通しの)被告人も映像がよく似ていることは認めているようで、その点警察のミスにも酌むべき事情があるとは言えよう。しかし結果として虚偽自白をとり、真犯人をとり逃したことに変わりはない。執拗な追求が虚偽自白を生むことがあるのだ、という認識を取調官がきちんともち、供述がはらむ不合理を「ひょっとして無実かも?」という視点からも検討してみるのでなければ、同じことはまた繰り返されるだろう。