有罪率100%!


裁判員制度がはじまってから1年、ということで各社が報じているが取りあえず毎日の記事から。

 国民が重大事件の審理に参加する裁判員制度が始まって21日で1年。最高検は20日、同日までに裁判員裁判で530人に判決が言い渡されたと発表した。今後、7月末までの2カ月余で約360件の審理が終わる予定を明らかにし、「『裁判の滞留』は解消に向かいつつある」との認識を示した。
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 最高検によると、判決が出た530人はすべて有罪。強盗殺人未遂罪での起訴が強盗致傷罪と認定されるなど、3人は起訴より軽い罪名が適用された。取り調べの一部を録画したDVDは3件の公判で上映された。最も重い量刑は無期懲役で8人。実刑は437人、執行猶予判決は93人で、執行猶予のうち57%の53人に保護観察が付いた。判決に対する検察側控訴はゼロ。

530人というのがサンプルとして十分な数字なのかどうかは別として、有罪率100%である。もちろんこれは検察が(裁判員制度を意識して)公判の維持に万全の自信があるものだけを起訴した結果なのかもしれない。仮にそうだとすると、有罪にできる見込みの十分あった事件が立件されずに終わった……という問題が「100%」という数字の陰に隠れていることになる。他方、「判決に対する検察側控訴はゼロ」ということが、量刑まで含めておおむね検察側の主張通りの判決になったということを意味するなら(これまた、検察が制度の発足直後であることを意識して控訴を手控えたためかもしれないが)、検察が充分な自信を持てない事件までもが立件されて審理されることに不安を抱かざるを得ない。むやみやたらと起訴が行われるのは好ましいことではないけれども、他方で有罪率が超高率のままであり続ければ「起訴されたんだから犯罪者なんだろう」という先入観を強化しかねない。


追記:そういえば執行猶予付き判決の場合に保護観察がつく割合が高いことは、以前から裁判員裁判の判決の特徴として報じられていたように思う。「市民感覚の現われ」とでもいうのだろう。しかし聞くところによれば実質的に保護観察制度を担っている保護司は高齢化が進んでおり、人材難が懸念されているという(無給であるから、公募があれば誰でも応募できるというものではない)。判決後には有権者としてこうした点にまで意を配るのでなければ「市民感覚」とは言えないのではないか。