『レスラー』ほか(レンタルDVD)

  • 『喧嘩 ―ヴィーナス vs 僕―』 싸움 (監督:ハン・ジスン、出演:ソル・ギョング、キム・テヒほか、2007年、韓国)

いかにもダメそうな邦題だけどソル・ギョング主演という点に期待してレンタル。で、やはり彼は期待に違わないのだけれども……。後から思い起こして印象に残っているシーンが二つくらいしかないや。

こちらはさしたる期待もなく、割引クーポンがあったので借りてみたのだが、低い期待値はゆうゆうと上回ってまずまず楽しめた。いわゆる見立て殺人もの。結末は「バレバレじゃん」と見るか「観客にフェアに手がかりを与えていた」と見るか、評価が分かれるかもしれないが。"Anti-Christ" を「キリスト反対者」と訳した字幕は問題。こういうのはガジェットに関わる文言をちゃんと訳さなきゃ。なおこの映画では「ヨハネの黙示録」に使われている "Come and See"という一句が使われているのだが、新共同訳ではここは「出て来い」と訳されている(黙示録6:1)。まあ "come and see" を「出て来い」と訳してもおかしくはないのだが、ちょっと気になって岩波の新約聖書翻訳委員会訳を見てみるとやはり「出て来い」で、さらにこの箇所に訳注がついている。

 若干の写本によれば、幻視者ヨハネに呼びかけるように「来て見るがよい」。六3の「出て来い」の場合も同様の異読がある。

New American Standard Bible でここがどう訳されているか確認できていないのだが、新共同訳とNASBは同じ底本を採用しているようだし、岩波の訳も同じ底本の一つ新しい版を使っている。映画には古ぼけた聖書が出てきたのでNASBじゃないということになるだろうが、オンラインで参照できる古い American Standard Bible でここが "Come" と訳されていることを考えると、やはり「来て見るがよい」ではなく「出て来い」にあたる読みを採用しているのだろう。で、"Come and See" という英訳があるかどうかを調べてみるとどうやらジェームズ王欽定訳がそうなっているらしい。やっぱり映画のガジェットとして使うには、学問的な訳よりもいい、ってことだろうか。

昨年劇場で観るつもりで観損なった一本。野暮なことを言えばヒールが「アーヤトッラー」なんてリングネームを名乗って観客が "USA! USA!" とコールするとか、選手の薬物への依存(プロレスを続けること自体がアディクションになっているようにすら見える)とか、とても見過ごせないような描写がてんこもりなんだけど、まあやっぱり野暮ですよね(^^;