上には上が!


昨日の続きです。こちらも約30年続いていた慣行だそうで。

 大分県柔道連盟が県内の中学、高校の体育教員に、2日間の講習を受けるだけで柔道の黒帯(段位)を授与していたことがわかった。講習は、同県教育庁が連盟に委託して開いており、約30年前から毎年1回行っている。


 県教育庁体育保健課によると、2011年度は14人が、10年度は5人が受講し、全員、初段になり黒帯をもらった。これまで受講した体育教員のほとんどが合格したという。
(後略)

こちらは「全員」ではなく「ほとんど」が合格とされてますが、まあ実質的には同じことですよね。


ところで、武道(およびダンス)の必修化にあたってその危険性がどの程度国会で議論されたのか、ごくごくおおざっぱな調査をしてみました。国会の議事録過去10年分を「柔道 必修化 事故」および「武道 必修化 死亡」というキーワードの組み合わせで検索してみたところ、いずれも同じ2つの質疑しかヒットしませんでした。一つ目は昨年2月25日の衆議院予算委員会第四分科会における吉田統彦議員(民主)の質問です。

○吉田(統)分科員 民主党吉田統彦でございます。
 大変貴重なお時間でございますので、早速質問に入りたいと思います。
 まず、武道の必修化についてお尋ね申し上げます。
 平成二十年一月の中央教育審議会答申によりまして、平成二十四年度から武道とダンスが中学校で男女ともに必修化されることとされております。その中で、とりわけ多くの生徒さんが柔道を選択することが予想されます。
 そこで、私は少し心配していることがございます。愛知教育大学の内田講師が部活動における事故の調査をずっとしているんですが、これによると、中学、高校におきまして、一九八三年から二〇〇九年までの二十七年間、実に百八人の生徒さんが柔道事故によって不幸にして亡くなっておられます。これは一年にすると四人から五人、決して少ない数ではないと思います。また、加えて、重度の障害を負うケースを含めるとかなりの数に上ることが想像されます。
(中略)
 そこで重要なことは、やはり指導者ということになると思います。すべての学校に必修化ということで十分な指導者が行くことは非常に難しいことではあると思うんですが、例えば武道を専門としない先生方に研修を受けていただいて授業を受け持っていただいたり、ないしは外部からしっかりした指導者を招聘するという案も考えていらっしゃると私は伺っております。
 そこで、こういった武道の経験がない先生に対する研修制度のあり方、そして武道指導者を学校外から招聘する場合の採用基準、さらに武道を指導するに十分であるということを文部科学省が確認する方法に関して、まずお伺いしたいと思います。


○鈴木(寛)副大臣 まず、研修でございますが、独立行政法人教員研修センターや武道関係団体との共催で、保健体育科の教員の資質向上のための講習会等を開催いたしておりますし、さらに、都道府県レベルで武道の経験の浅い教員向けの講習会を実施しているところでございます。
(後略)

その講習会たるや、最短2日で黒帯というものすご〜く密度の濃いものだったわけですね!
次はやはり昨年の6月1日、文部科学委員会での宮本岳志議員(共産)の質問です。

○宮本委員 日本共産党宮本岳志です。
 いよいよ大詰めを迎えたスポーツ基本法案にかかわって、前回やり残した、スポーツの担い手などの人権、安全問題をまず聞きたいと思います。
 来年四月から中学校での武道必修化、これを目前にしながら、依然として、授業や部活あるいは民間の教室などで柔道の事故が後を絶ちません。独立行政法人日本スポーツ振興センター発行の「学校の管理下の死亡・障害事例と事故防止の留意点」二〇一〇年度版には、部活動で乱取りの練習中、ある生徒が顧問に大外刈りをかけ、返しわざをかけられた後、意識不明となり容体が急変、病院に運ばれ、手術を受け治療を受けたが後日死亡というような事例がたくさん紹介されております。
 柔道事故の事例を調べてみると、一九八三年度から二〇〇九年度までの二十七年間で百十人の子供が亡くなり、一九八三年度から二〇〇八年度までの二十六年間で、二百六十一人の子供が何らかの後遺症が残る重い障害を負っております。
 こうした現状に、事故被害者家族や子供たち、あるいは関係者も危惧の声を上げておりますけれども、こういう紹介した事故には少なからず顧問がかかわっており、指導者という役割に照らしても、看過できない問題だと思うんです。
 まず大臣に、こうした現実をどのように受けとめておられるか、お答えいただきたいと思います。


○高木国務大臣 宮本委員にお答えをいたします。
 体育の授業において、平成二十四年度、来年度から中学校において武道が必修化になっておりまして、御指摘の事故はあってはならないものでありまして、各学校において、部活も含めて、安全の確保は最重要であろう、このように思っております。
 そういう中で、昨年ですが、二十二年七月には関係機関に対して、柔道における安全指導、こういったものの文書を発出しておりますし、くれぐれもこの事故防止の注意喚起を怠らないように、そのようなことを指導しております。
 特に、教育研究センターや武道関係団体とも連携をいたしまして講習会なども開催をしております。今年度は新たに体育活動の中の事故防止に関する調査研究を行いまして、事故の分析あるいは防止策、こういったものについて検討して、学校体育の安全確保に努めてまいりたいと思います。


○宮本委員 事故を医学的、科学的に解明をして、再発防止策を立てて、急いですべての指導者に研修を行って指導水準を向上させていく、あるいは体育館の床を一層安全なものにするなど、柔道事故をなくすための一層の取り組みを急いでいただきたいと思います。
 同時に、こうした事故の背景に、練習や指導に名をかりたしごきや体罰があるという指摘がございます。
 昨年、大阪市内の柔道教室で起きた死亡事故では、亡くなった小一の子供が初心者と知りながら、さらには体調不良を訴えていたにもかかわらず、根性をつけるためとして繰り返しわざをかけられ、死亡したという事例が起こっております。
 一方、欧米では、子供たちが柔道によって命を落とすことはほとんどありません。
 イギリスの例を紹介いたしますけれども、イギリス柔道連盟では児童を保護するためのガイドラインをつくっておりまして、けがをするとわかっていながらわざをかけることも、根性をつけるためと繰り返しわざをかけることも、勝利の価値を強調し過ぎることも、虐待であるというふうにガイドラインで定めております。イギリスでは、指導者になるためには、この研修は必修だということになっております。
 柔道などの武道では、スポーツ活動を通して、相手への尊重と協同する精神、公正な規律をたっとぶ態度などを培っていく。そうした精神を指導者らの規範として確立していくことは、スポーツを担うすべての人々の人格、人権を守ることや、これからの我が国のスポーツの発展にとっても必要なことだと私は考えますけれども、大臣の御見解をお伺いいたします。


○高木国務大臣 スポーツの指導者の責務、役割というものは極めて重要でございます。したがいまして、しっかり講習会等も行いながら、安全確保のための資質を向上させていく、こういうことで努めていきたいと思っております。
 今御指摘の、いわゆるしごきや体罰というテーマでございましたが、これは我々としては、まずは、武道というのは我が国の固有の文化でありまして、勝負の勝敗もさることながら、相手を尊重して試合を全うする、そして、勝負の終わった後はお互いに励まし合ってまた次を目指す。こういう、ある意味では武道の意義をこの授業においてはしっかり体得をしていただく。このことが一番重要なことでございまして、これをもって人権を侵害するとか、あるいは健康、安全を害すとか、こういうことが絶対あってはならない、このように思っております。

具体性に富む質問に対して、空疎な答弁の見本のような答弁ですね。人間の命を大切にしない「美しい日本」の伝統は健在のようです。