現在発売中の『週刊金曜日』2021年9月17日号に浜田寿美男さんのインタビュー記事が4ページにわたって掲載されています。昨年刊行された『袴田事件の謎』(岩波書店)の成果の一部が紹介され、有名な「無知の暴露」という概念についても解説されています。興味のある方はぜひご覧ください。
冤罪認めぬ恥知らずな主張
湖東記念病院事件の国賠訴訟で、国とともに被告となっている滋賀県が原告を“犯人”扱いする主張をしていた、という驚愕のニュースです。記事にあるように東住吉事件の国賠訴訟でも取り調べにあたった元警察官がやはり原告の青木さんを“犯人”扱いする証言をしていますが、こちらはすでに公務員ではない個人の主張で、元警察官に反省がみられないという問題なのに対し、滋賀県がこのような主張をすることの重大さは言うまでもありません。しかもこのような主張をすることを県知事には報告していなかったようです。
すでに確定した再審無罪判決を民事訴訟で裁判所が覆すとはとうてい考えにくく、また百歩譲って捜査に違法性がないと主張するにしても再審無罪判決を否定する必要はありません。冤罪被害者の傷に塩をすり込むかのような振る舞いはより高額な賠償を命じる事由になりかねません。どこからどう見ても無駄な主張をする理由は県警という組織のメンツ以外にはありえず、県警トップの責任が問われるべき事態だと思います。
違法捜査国賠訴訟、桜井さんの勝訴が確定
本来ならば当たり前に過ぎないこととはいえ、喜ばしいニュースです。
茨木県警本部の「今回の判決の結果を真摯(しんし)に受け止め、今後も引き続き、緻密かつ適正な捜査を推進してまいります」という紋切り型コメントが引用されていますが、違法な捜査を指弾した判決が確定したのですから、「“今後は”緻密かつ適正な捜査を推進してまいります」と述べるべきでしょう。
桜井昌司さん、高裁でも勝訴
-朝日新聞DIGITAL 2021年8月27日 「布川事件訴訟、東京高裁が一審判決維持 国に賠償命令」(アーカイブ)
「布川事件」冤罪被害者、桜井昌司さんが違法な捜査に対する損害賠償を求めて国と茨城県を訴えていた裁判の控訴審で、原告勝訴の判決が下りました。地裁判決が認めた茨城県警の捜査の違法性に加えて検察による捜査の違法性も認めた判決とのことで、ガンで闘病中の桜井さんが無事控訴審判決を迎えられるかどうか危ぶまれていただけに、ひとまず胸をなでおろしました。高裁で地裁よりも国や県に厳しい判決が出た以上、上告しても判決が覆る可能性はまずありません。なんといっても冤罪だったという事実は動かないのですし。国と県には早々に上告断念の決定を下すことを求めたいと思います。
『無垢なる証人』配信情報
昨年1月に日本公開された『無垢なる証人』、ブログ内を検索したら2月に観に行って「劇場公開が終わったらなにか書こうと思います」と書いていましたが、その後新型コロナの蔓延が本格化してそれどころじゃなくなってたんですね。
Amazon Japan から来たメールで、この映画がプライム特典として(プライム会員には)無料で視聴できるようになったことがわかりました。調べてみると Hulu でも配信されています。どちらかに加入されている方には是非に、とお勧めしたいです。
「証人」役のキム・ヒャンギ、私は出演作を3本観ているのですが、まったく違う役柄をきちんとこなしていました。どれも10代での出演作です。
新型コロナがウナギへの脅威に?
-毎日新聞 2021年7月22日 「コロナ下でウナギ店への衣替えが相次ぐ理由」(魚拓)
客数が減ったのを単価の高さと持ち帰り需要で補うために和食店がうなぎ料理店に業態を変化させる例が相次いでいる、という記事です。
近年高騰していたウナギそのものの価格の下落も呼び水となっている。東京都中央卸売市場では5月時点で前年同月より16%安く取引されており、最近のピークだった18年と比べると2割安い。養殖池で育てるニホンウナギの稚魚で、主に川で取れるシラスウナギの漁獲量が回復しているためだ。多くが今夏に出回る20年の漁期には国内だけで17・1トンが取れ、歴史的な不漁だった19年漁期の3・7トンから大幅に回復した。
上記のように漁獲量への言及はありますが、主眼はあくまで価格の低下におかれており、17.1トンという数字がピーク時の10分の1にも満たないことには触れていません。末尾の専門家コメントも「コロナ収束後もウナギ人気が続くかどうかは不透明で、稚魚の漁獲量次第では仕入れが難しくなる恐れもある」というもので、経営への影響しか考慮していないものです。
飯塚事件、第二次再審請求
(飯塚事件では「自白」はありませんが、冤罪事件/冤罪疑惑事件を扱う記事には「自白の研究」タグを用いています。)
-朝日新聞DIGITAL 2021年7月9日 「飯塚事件」2度目の再審請求申し立て 「新証拠ある」(アーカイブ)
確定判決の事実認定とは矛盾する目撃証言を新証拠とした、とのことですがこの記事ではどのような経緯でその証言が得られたのかは明らかではありません。
-西日本新聞 2021年7月10日 新たな目撃証言「別人の車に2女児」 飯塚事件、2度目の再審請求(アーカイブ)
こちらの記事によれば、目撃証言の主は事件発生翌日に警察に通報、「約1週間後に警察官に事情を話したが、聴取はその1度きりで供述調書は作成されなかった」とのこと。「記者会見」も行ったとされていますので、今年4月に第一次再審請求が棄却されたのを機に弁護団にコンタクトを取ったのかもしれません。詳細が判明したらまた追記いたします。