「日本一長く服役した男」

f:id:apesnotmonkeys:20081226100616j:plain

土曜日

なぜか NHK のサイトにきちんとした番組の情報が残っていないので、番組表のスクリーンショットを貼ります。

f:id:apesnotmonkeys:20210227230055j:plain

「日本一長く服役した男」

「仮釈放になってすぐに出てくることができる」という誤解が広まっている「無期懲役」についての問題提起……のはずなのですが。取材を受けた元刑務官の男性は「(無期懲役は)本当に終わりのない/いついつまで頑張ったらっていう 有期刑の者とは明らかに違うので/とてもじゃないが希望を持たすとか 指導の仕方っていうのはできなかった」(テロップの書き起こし、以下同じ)と無期懲役の重さを語りながら、「もう自業自得 当然の結果だと 見る人もおるでしょうし/特に被害者の方であれば それも仕方ないことだと思います」と語る。取材中に死亡した元受刑者の火葬に立ち会った男性は「男性〔=元受刑者〕の生きた意味 どういうものだと?」と問われ、「人の命を奪って 人の未来も奪ったんだから 仕方ないんじゃないですか/人の未来奪っといて 自分だけのうのうと生きようなんて/そんな世の中は通らないと思いますよ」と語る。

極めつけは、元受刑者を受け入れた福祉事務所の代表。受け入れた当初の取材では「ここで与えられた使命というのは 社会復帰させることですから/罪を問い詰めることじゃないです/過去を責めても仕方ないでしょ 今からを見ていかんと」と語っていたにもかかわらず、元受刑者の生活態度にいらだちを覚えると「一生ね 自分の中で罪は償うていかな/刑務所で償うのか ここで償うのか 場所が変わっただけ/今から生きるためには Aさんが亡くなられた 自分があやめた人に/手を合わせて「すまんやったごめんやった」 ちゅうて生きていかなんと」と説教をしてしまう。

 

しかし人の未来奪っといて 自分だけのうのうと生きようなんて/そんな世の中は通らないと思いますよ」というのは本当だろうか? 2千万人の「未来」を奪った侵略戦争や植民地支配についてこの社会はそんな姿勢を見せているだろうか? むしろ「いつまで過去を蒸し返すのか!」と声高に言い立てているのではないのだろうか?

元刑務官と火葬に立ち会った男性の二人の語りは、番組中で語られたことだけを見ると61年もの服役を「仕方ない」としているようでいて、語り口や身振りなどは口にできない思いをなお抱えこんでいるようにも思えた。本当は「無期懲役」についてもっと批判的なコメントも口にしたいのに、「世間」がそれを許すまいと思っているようにも見えたのだ(あくまで見えた、だけだが)。それがまた、61年も服役した男の犯罪と国家犯罪に対するこの社会の態度の違いを痛感させた。

 

いつもコメントを下さる Teru さんからメールでお知らせをいただいたのだが、この番組についての Zoom ウェビナーが来月末に開催されるとのこと。

cpr20210328.peatix.com

私も早速申し込んだ。上記のような私の感触が正しかったのかどうか、確かめてみたい。

毎度の責任転嫁

f:id:apesnotmonkeys:20081226100336j:plain

金曜日

-JIJI.COM 2020年11月24日 「日本海スルメイカ、資源量急減 中国違法乱獲、20年強で4分の1」(archive

水産資源に関する記事ではよくあることですが、ここでも日本側の乱獲はスルーされています。しかし鮮魚売り場を日常的に訪れていれば、スルメイカに異変が起きたのが昨日今日(非吉村洋文的意味)のことではないことが素人にもわかっていたはずです。個人的な印象では店頭に並ぶスルメイカの小型化が顕著になったのはもう10年近く前のことです。

この時期になると話題になる「恵方巻き」ですが、今朝のテレビでは海苔ではなくマグロで酢飯を巻いた下品極まる恵方巻きが紹介されていました。もういい加減食品、特に保存の効かない食品をイベントのネタにするのはやめるべきです。

名張毒ぶどう酒事件で証拠開示要求

f:id:apesnotmonkeys:20081226100455j:plain

火曜日

-朝日新聞DIGITAL 2021年1月26日 「名張事件、証拠開示求める

 弁護団によれば、未開示の証拠が約2千ページ分! もあるとのこと。

ところで、いわゆる「安楽死」について、同意殺人ないし嘱託殺人の違法性が阻却されうる要件を初めて示した判決として知られている名古屋高裁昭和37(う)496を読んだことがあるのですが、この事件で病気の父親を殺害した息子は殺害方法について名張毒ぶどう酒事件を参考にしたと事実認定されています。思わぬところで出くわしたのでびっくりした記憶が。

方言と虚偽自白

f:id:apesnotmonkeys:20081226100455j:plain

火曜日

昨年の暮、興味深い記事をみかけました。

-朝日新聞DIGITAL 2020年12月22日 「どや」「言えや」自白を導く、方言の迫力 冤罪も生むarchive

方言は真実の自白を引き出すときもあれば、人権を侵害することもある「両刃の剣」――。岡山理科大准教授の札埜(ふだの)和男さんがこんな研究をまとめた。取り調べで方言は親しみを感じさせる道具として使われる一方、無実の人にうその自白をさせてしまうおそれもある。「研究が冤罪(えんざい)をなくす一端になれば」とねがう。

 「言いたくないことを言わされる」のは虚偽自白の場合も、多くの真正な自白の場合も同じです。ですから、真犯人に自白させるのに有効なテクニックが虚偽自白をも引き出す恐れがある、というのは考えてみれば当たり前でしょう。

記事では元検察官の弁護士が「調書でマニアックな方言が出てきたら、自発的にしゃべっていることになる」とコメントしていますが、冤罪被害者が「真犯人になったつもりで」供述しているときには、取調官の胸の内を推理しつつ“自分の言葉”で喋っているわけですから、安易に「自発性」を認めるのは危険でしょう。

興味深かったのは、この研究のきっかけです。

  研究のきっかけは3年前、兵庫県西宮市の施設で園児が水死体で見つかった「甲山(かぶとやま)事件」の冤罪被害者、山田悦子さんとの電話だった。山田さんは関西弁をまじえた取り調べをうけた経験を「落とすときは関西弁。虚偽自白、冤罪は方言のやりとりから生まれる」とふりかえった。札埜さんは「方言の使い方によってはマイナス面もあるのではないか」と考えたという。

 虚偽自白研究において被疑者に「親身になってくれている」と思わせるテクニックにはしばしば言及がありますが、「方言」に着目した例はちょっと記憶にありません。入手できたらまた取り上げてみたいと思います。

一刻も早く原告勝訴判決を

f:id:apesnotmonkeys:20081226100455j:plain

火曜日

-朝日新聞DIGITAL 2020年12月15日 「再審で無罪、命の残りは2カ月 「真実に誠実」語る決意」(アーカイブ

今年、一番衝撃を受けたニュースの一つになるでしょう。

 告げられた命の残りは約2カ月、最期まで声を上げる――。1967年に茨城県利根町布川(ふかわ)で起きた強盗殺人事件で有罪となり、44年後に再審で無罪になった桜井昌司さん(73)が、末期がんを患いながら「冤罪(えんざい)のない社会に」と伝え続けている。15日の国家賠償請求訴訟の控訴審では、病状とともに、違法捜査の検証や証拠の全面開示の必要性を裁判官に訴える。

記事の結び(有料部分)では「判決言い渡しは、来年になるとみられる」とされています。こちらの記事によれば6月が予定されているそうです。一審は桜井さんの勝訴判決で、逆転敗訴という可能性は低いとは思いますが、無事判決の日を迎えられるよう祈るばかりです。

袴田事件再審請求、高裁へ差し戻し

f:id:apesnotmonkeys:20081226100433j:plain

水曜日

 袴田さんの年齢を考えれば再審開始の決定を下すべきでしたが、最悪の事態は免れましたね。