今年も続く大量虐殺

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火曜日

-47NEWS(共同) 2020年7月16日 「ウナギ稚魚が6年ぶり豊漁 昨年4倍超、かば焼き値下がりか」(archive

見出しが全てを物語っています。「昨年4倍」といっても全盛期とは比べるべくもなく、また何らかの保護策が奏功した結果でもありません。しかし浮かれているのは決して共同通信だけではありませんでした。

 「夏バテ」といってもその原因は多様であるうえ、今の日本は「様々なビタミン」の摂取のためにウナギに依存しなければならないような状況にはありません。買い物に立ち寄った百貨店の食料品売場はあちこちに「土用の丑」をPRするポップが溢れており、絶滅危惧種を大量消費していることへの問題意識などどこにも見当たりませんでした。レジ袋を有料化する前にやることがあるだろう、と思わざるを得ません。

 

「術後わいせつ」事件で有罪判決(追記あり)

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金曜日

本件は「自白」のある事件ではありませんが、否認事件の裁判を扱っているという理由で「自白の研究」タグを用いています。

-日経メディカル 2020年月16日 乳腺外科医の控訴審有罪判決、中川会長「体が震えるほどの怒り」

この裁判についてはとりたてて情報を集めていたわけではありませんので、逆転有罪判決それ自体について現時点では述べるべき見解はもっていません。ただ、この判決を批判する SNS 上の反応には、まるで「被害者」の供述だけにもとづいて有罪となったかのように主張するものが少なからずあります。これは性暴力事件の告発に対して発生するバックラッシュにおいてしばしば見られるパターンですので、座視できません。果たして一部で言われているような荒唐無稽な有罪判決だったのか。医師という権威者を守りたいという動機によってバイアスが生じていないか、という視点も(SNS上の反応を見ていると)必要であるように思います。

「被害者」の供述以外にも被告人に不利な事実があることは、一審の無罪判決後にも報じられていました。

-文春オンライン 2019年3月12日/2020年7月13日 諸岡宏樹「逆転有罪判決 女性患者の胸を舐めたのか……「手術後わいせつ事件」報道が伝えない不可解な事実」

SNSでは証拠となる試料が廃棄されたかのような主張も見られますが、上の日経メディカルの記事にもあるように廃棄されたのは「DNA抽出液」であって試料そのものは保存されているという指摘もあります。

 

追記:逆転有罪判決についての続報を追記しました。少なくとも、一部で言われているような荒唐無稽な判決でないことは確かである、と言えそうです。

-文春オンライン 2020年7月21日 手術後わいせつ事件 女性患者の胸を舐めた医師が「逆転有罪」になった理由

-Huffpost 2020年07月22日 準強制わいせつに問われた乳腺外科医は、どうして逆転有罪判決になったのか。【女性患者側弁護士が解説】

 

優生保護法被害訴訟、東京地裁でも請求棄却判決

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火曜日

優生保護法下で意に反する不妊手術をされた被害者が起こした国賠訴訟については、昨年5月に仙台地裁で原告敗訴(優生保護法違憲性は認められるも請求棄却)の判決が下りましたが、本日6月30日、東京地裁でも請求棄却という結果になりました。弁護団の声明と判決要旨はこちらから閲覧することができます。

どちらの判決でも原告にとってネックとなったのは、旧優生保護法の廃止(母体保護法への改正)からでも(除斥期間の)20年以上が経過している、ということでした。強制不妊手術という被害の元凶となった法律の廃止はたしかに事情の変化としては大きなものですから、おそらく原告弁護団も最大の障害として意識し、備えてきて、なおこの判決だったのでしょう。

原告が裁判を通じて問うているのは国家の責任ですが、除斥期間を盾にとった請求棄却判決は同時にこの社会の市民の責任でもある、と思います。旧優生保護法の廃止という一定の成果をあげたとはいえ、その後20年間、被害者が声を上げることのできる環境をつくることができなかったわけですから。

 

再審制度の不備、また顕わに

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金曜日

-京都新聞 2020年6月18日 再審棄却の裁判長、高裁抗告審の裁判長に 日野町事件、弁護側「公正さ欠く」

日野町事件の第二次再審請求即時抗告審の裁判長が、第一次再審請求時に大津地裁裁判長として請求棄却の決定を下した裁判官になった、というニュースです。

理屈のうえでは第二次再審請求で新たに提出された証拠に照らし第一次再審請求の際とは異なる判断を下す……という可能性はありますが、そんなことが現実に起こると考えるひとはまずいないでしょう。

 刑事訴訟法では、通常の一審、二審の公判を担当した裁判官が上級審の審理に関わることを禁じている。一方、再審については規定がなく、1959年の最高裁判例では、通常審の限りではない、とされた。刑事訴訟規則では不公平な裁判の恐れがある場合などは、裁判官は担当を外れなければならないと規定している。大阪高裁は18日、「裁判体の構成に関することは答えられない」とした。

引用部分にあるように、通常の刑事裁判にはある規定が再審には欠けていることが原因です。構造的な問題ですから、先例もあります。

-西日本新聞 2019年9月2日 大崎事件2次・3次最高裁決定 再審棄却 同じ判事関与 識者「公正中立さ欠く」

名張毒ぶどう酒事件で新たに証拠開示

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金曜日

-FNNプライムオンライン(東海テレビ) 2020年6月5日 “名張毒ぶどう酒事件”で15年ぶり新証拠開示…住民の供述調書9通 弁護団「再審請求の重要な材料」

現場にいた住民の事件直後の供述調書が新たに証拠開示された、との報道です。

その中でぶどう酒の王冠の「封緘紙」について、奥西元死刑囚の自白では「自分がはがした」としていましたが、7人のうち3人の調書には「紙はついたままだった」と矛盾した内容が書かれていました。

残念ながらこの記事では、封緘紙についての供述が「いつの時点で確認した」というものなのかが明らかではありませんので確定判決の筋書きとどう対立することになるのか、 明確ではありません。ただ、検察が都合の悪い証拠を隠していたことは明らかでしょう。

再審請求を引き継いでいる遺族も高齢です。一刻も早く再審開始にこぎつけてほしいものです。

 

大崎事件に関するオンライントークイベント(6月3日)

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日曜日

新型コロナ感染症対策で市民運動もオンラインイベントへの対応を模索しています。そうした試みの一つが告知されていましたのでこちらでも紹介させていただきます。

 

 

左右の非対称性について

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水曜日

 

自称中立な人々が右派の失態を否認しきれなくなったときによく持ち出すのがいわゆる「どっちもどっち」です。もちろん、右派であれ左派であれ同じ人間である以上、同じような錯誤を犯すことがあるということはできますが、当たり前過ぎて無意味な言明でもあります。

他方、右派と左派の間であきらかな非対称性がみられる事柄はいろいろあります。その一つが最近またネットを賑わしました。法華狼さんによる整理を拝借いたします。

-法華狼の日記 2020年5月4日 「間抜けたことを言っているのを見たくない」という理由で芸能人の政治的発言を嫌がる人物が、「表現の不自由展」について語っていたこと

左派がウヨった芸能人の「政治的な発言」を批判することはしばしばありますが、「政治的な発言をしたという事実」を批判した例はちょっと思い出せません。ところが、これは“芸能人が政治的な発言を許容するかどうか”をめぐる非対称性ではありません。というのも、右派はウヨった芸能人の右派的な発言にはまったく文句を言わないからです。

つまりここにあるのは「誰にでも政治的発言をする権利はある」という立場と、「ウヨくない芸能人の政治的発言だけは許さない」という立場との非対称性だ、ということになります。